| 自然布を織る 
 「森の空想ミュージアム/森の空想工房」で行ってきた「自然布・染織ワークショップは、
 2009年4月に開館した
 「石井記念友愛社内/茶臼原自然芸術館」
 へと移転し、継続していますが、
 お申し込みがあれば、
 「森の空想ミュージアム」のワークショップ
 「空想の森の草木染め」と連動して実行します。
 お問い合わせ下さい。
 
 ■自然布織り/森の空想工房[2008年10月1日更新]
 
 
  
 ◇自然布ワークショップ「木綿(ゆふ)を織る」は、@楮の採集 A蒸し B皮はぎ
 C叩き D籾殻をまぶして踏む E川水で晒す F寒晒しG糸績みH糸縒り
 I織りなどの行程を一貫して行っています。開催期間は、12月から2月まで。
 *随時申し込みにより行います。詳細はお問い合わせください。
 
  
 
 
  
 ◆自然布ワークショップ「木綿(ゆふ)」を織る 山野に自生する「楮(コウゾ)を採集し、繊維を採り、糸にして、古代の布「木綿(ゆふ)」を織り上げます。楮の繊維で織られた布は、古来、「木綿(ゆふ)」と呼ばれ、衣類や神が降臨する御幣などに用いられました。昨年(2003年)までは、真冬の湯布院や九州山地まで出かけて、楮の群生地で採集し、温泉で蒸して繊維を採りましたが、今年は、「森の空想ミュージアム」のすぐ近くの、「うちゅうの泉」と名づけられたファンタジックな場所に楮の群落が発生しました。私たちは、まるで神様からのプレゼントのように、いながらにして、楮を採集できるようになったのです。今年は、空想工房の庭に作ったかまどで、蒸す工程から繊維の採集、織りまでを連続して行います。楮を採集することは、自生地を保護・整備し、地域そのものを「ミュージアム」と見立て、育ててゆく作業でもあります。ぜひご参加ください。なお、従来どおり、湯布院コース(温泉と観光を兼ね、湯布院文化にふれる楽しい旅)、九州山地コース(神楽の開催日に日程をあわせ、神楽見学を兼ねた旅)もご要望があれば開催します。詳しくは(事務局・「森の空想ミュージアム/森の空想工房」へお問い合わせください。 @     森の空想ミュージアムコース ◇     2004年1月22日、23日の2日間。以後継続して行うことも可。「うちゅうの泉」周辺に発生した群落から楮を採集し、繊維採りから糸作り、織りまでの全工程を「空想工房」にて行う。*     受講料/10000円(宿泊費・2000円/同工房、食事つき。中期・長期の滞在も可。近くのホテル・5500円より。交通費等は各自負担となります。)
 *     お申し込み、お問い合わせは
 「森の空想ミュージアムTEL・FAX0983−41−1281」へどうぞ。
 A     九州山地・神楽見学コース ◇     2004年1月29日〜31日の3日間。宮崎県諸塚村「戸下神楽」または宮崎県南郷村「師走祭り」を見て、そのあと九州山地で楮を採集。工程は@に同じ。*     参加費 55000円〜65000円(受講料、宿泊費、食費等を含みます。東京→宮崎間の航空運賃等は含みません。)
 *     この企画は旅行会社「自由旅のイエイテン(本社・大分市/TEL0975−37−7373<担当・小野>)の扱いとなります。参加人数により参加費が異なります。参加5名様以上の実施となります。詳しくはお問い合わせ下さい。戸下神楽の情報についてはイエイテンホームページの「九州神楽紀行」をご覧下さい。
 B     湯布院コース ◇     2004年2月11日〜13日の3日間。湯布院のペンションに宿泊し、温泉・料理・湯布院文化などを楽しむ。工程等は@Aに同じ。*参加費 65000円〜75000円(受講料、宿泊費、食費等を含みます。東京→宮崎間の航空運賃等は含みません。参加人数により参加費が異なります。)
 *この企画は旅行会社「自由旅のイエイテン(本社・大分市/TEL0975−37−7373<担当・小野>)の扱いとなります。参加5名様以上の実施となります。詳しくはお問い合わせ下さい。
 
     
 
  
 
 *上記写真は不知火書房刊「ゆふを織る」(横田康子著/1999)に掲載されたものです。
 
 ◆春の草木染めワークショップ山桜で染める
 *とき 3月下旬の2週間  10:00−15:00*ところ 森の空想工房(各自弁当を持参してください)
 *受講料 3000円(シルクスカーフ1枚代金を含む)
 前年の台風で倒れた桜の大木がまだ生きていて、いま、蕾を一杯にふくらませています。この春、最後の花を咲かせて、枯れるのでしょう。こ
 の木の精をいただいて、染めます。絹の布が、まるで桜の花と春の空の
 色とが混ぜ合わされたような、輝くばかりの桜色に染まるのです。この
 桜の木は、友愛社の古い運動場の脇で、子どもたちの成長を見守り続け
 てきたのです。この木のいのちを布に染めて、記憶にとどめることもま
 た、草木染めの効果であり、楽しみなのです。
 *当日は、約30人の参加があり、盛況でした。この企画は毎年3月20日前後の2週間にかぎって行います。友愛社の敷地全体に山桜山桜を植える取り組
 みが進み、枝を採集できる状態となりました。つぼみを一杯に付けた時期だけその
 色を、糸や布に分けてくれるのです。
  
  
   
  
 自然布ワークショップ
 「天蚕出ガラ繭でズリだし糸を作る」
  
 夏から秋へかけて、里山や渓流沿いの小道などを歩いていると、薄黄緑色の天蚕
 (天然の蚕)の出ガラ繭を拾うことがあります。その繭や天蚕飼育農家から分け
 てもらった出ガラ繭を灰汁で煮て、糸を作ります。
 「日本書紀」には、天照大神が繭を口に含んで糸をとる様子が描かれています。
 大分県玖珠神楽の神楽歌にも同様の詞章があります。古代の人々が繭から糸を
 作り出したのは、この方法だと思われます。当館・空想工房の横田は、この
 「ズリだし」技法を玖珠神楽の伝わる九重町の伝承者から習得し、
 受け継いでいます。
 繭を灰汁で煮ることで美しい黄色になり、糸になると野性味を帯びた独特の輝き
 を放ちます。緯糸(ヨコイト)として太くも細くも手で自在に
 紡ぐことができます。
 
 ◇日時 随時 一日で済みます。
 ・朝10時から午後4時ごろまで。
 ◇場所 森の空想ミュージアム/森の空想工房
 ◇受講料 10000円(天蚕出ガラ繭100グラム付き)
 *昼食をご希望の方は申し込みの際にご連絡下さい。「おばあちゃんのお昼ごはん」
 を用意します。
 実費500円
 ■準備するもの ・ジーパンなどの分厚い布(小さい風呂敷程度)
 ・ナイロンパンツ(風よけと衣服が濡れないため)
 ・長靴または水がかかっても濡れない靴
 *この期間は、「九州神楽紀行」に合流し、宮崎の本格的な神楽を楽しむこともできます。
 *この企画は随時実行できます。詳細はお問い合わせ下さい。
 
 ◆染織ワークショップ
 「自然布」を織る
 苧麻(チョマ)による織り*5月はチョマの季節です。採集した苧麻(チョマ)から麻
 糸をつくり、織るーチョマは、「カラムシ」「ラミー」「ポ
 ンポン草」などと呼ばれる多年生の草木で、土手や林のへり
 など、至るところにみられるなじみ深い植物です。古来、こ
 のチョマからは上質の麻糸を得てきました。麻布こそ、庶民
 の「衣」としてもっとも親しまれた布なのです。5月末から
 8月末まで、チョマを採集し、麻糸をつくります。
 *随時申し込み受付*受講料 大人1人4000円 子供1人3000円(ラン
 チョンマット程度の布を織り上げ、お持ち帰りいただきます。
 *要・予約。
  
 葛布を織る 葛は山野に自生する強靭なつる性植物です。根からは良質なデンプンがとれ、薬用としても利用される有用植物ですが、
 山や畑の縁などでは、樹木に巻きつき、地を這い、はびこっ
 て迷惑がられる存在です。この葛の繊維から、光沢のある上
 質の糸がとれます。7月から8月へかけて、葛を採集し、コ
 ースター、テーブルセンター、のれん、タペストリーなどを
 織ります。
 *随時申し込み受付。*受講料 大人1人4000円 子供1人3000円
 *要・予約。
  《その他》
 ●絹の手紡ぎ糸をつくろう繭または山繭から糸を紡ぎます。
 *随時申し込み受付
 *参加費 山繭1人15000円
 繭(真綿)の手紡ぎ1人10000円
 ●古布による裂き織り
 *随時申し込み受付
 *参加費1人3000円
 *染織ワークショップには、当日参加のほか、中期滞在受講(1週間の
 滞在費+受講料合計30000円程度)または長期滞在受講(中期を参考)
 等による研修方式の受講も可能です。土曜日の学校教育の一環としてもご
 参加いただき、ご好評をいただいています。詳細はお問い合わせ下さい。
  
 
 
 自然布を織る
  「カラスの織物があるのよ」という言葉に誘われて、見に行ったことがある。七年ほど前、友愛社に付属する「のゆり保育園」を訪ねた時のことだ。それは、
 園の庭と「かさこそ森」と名づけられた小さな森との境界に立っている桑の木
 の小枝を、その森に巣をかけているカラスが拾い、巣づくりの材料にしていた
 ものであった。桑・山桑・梶・楮などは同種の植物で、その繊維からは古代の
 布「木綿(ユフ)」が得られる。かさこそ森のカラスは、柔軟性があって強靭
 なこの植物の性質をよく知っているのであった。
 徳島県木頭村は、「太布(タフ)」を伝える村である。太布とは、楮の繊維
 から糸を採り、織られた布のことである。古事記や万葉集などに、栲綱(たく
 づな)、栲布(たくぬの)などと記される布(または繊維)のことで、神を招
 き、神に奉げられる神聖な布であった。木頭村では、この古代の布が生活衣料
 として使用されながら、伝承されてきたのである。
 湯布院の古名を「木綿郷(ゆふのこおり)」といい、栲(たく)の木から
 「木綿(ユフ)」を織ったことにちなむという記述が「豊後国風土記」に残さ
 れている。楮の古名を栲という。タク=タフ=ユフ=は同義語であり、太布
 (タフ)と木綿(ユフ)もまた同種の布であった。
 由布岳の山麓に分け入り、私はこの楮を採集した。由布岳を源流とする川に
 山女魚釣りに行き、楮の自生地を発見したのである。それをもとに、相棒の横
 田康子が、10年の歳月をかけて「木綿(ユフ)織り」を復元した。
 湯布院から宮崎へと移転し、私たちは、その仕事を再開した。九州山地にも
 また楮が自生することを発見したからである。九州山地の楮の布は、近年まで
 生産されていたらしい。その機具を保存している民家も現存する。「木綿(ユ
 フ)」と呼んだかどうかは不明であるが、神楽の「採り物」や「御神屋飾り」
 として使用される例があり、神楽歌にもその起源を説くくだりがある。
 この地方は、葛や苧麻、藤、箆(へら)の木など、その繊維から糸を得る植
 物の宝庫である。これらの自然素材から得られた布を「自然布」と名づけ、
 「森の空想ミュージアム/空想工房」のワークショップの主役とした。一年を
 通じ、機音が響く工房が、カラスも手伝いにくるような染めと織りの空間とな
 ればいい、と私は思い続けている。
 (西日本新聞2004年3月14日付・文化欄/「森の空想通信」掲載分)
 
 
  
 自然布の温もり
 画廊の壁面を、ほのかな明かりが照らした。竹と自然布とを組み合わせた照明器具が、都会の小さな空間を、暖かなものにした。「自然布」とは、山野に自生する楮(こうぞ)、葛(くず)、藤(ふじ)、苧麻(ちょま)などを採集し、繊維をとり、糸を作り、織り上げた布のことだ。東京・京橋の画廊での企画展にあわせ、繊細な竹の造形によるクラフトとざっくりとした味わいを持つ自然布を組み合わせた作品を出品したところ、それが、大都会の小さなギャラリーに見事に調和し、心なごむ展示となったのである。
 竹のクラフトマン高見八州洋は、筆者の弟で、二十五年間、この道ひとすじに磨いてきた技を持つ。横田康子は、二十数年にわたり、私と一緒に仕事を続けてきた相棒である。湯布院の町で小さな古民芸の店「糸車」を開店したころ、彼女は染織の仕事と古布の魅力とに出合った。「由布院空想の森美術館」(1986〜2001年)の設立後は、裏方としてその仕事を支えながら由布岳の原生林に分け入り、楮を採集し、糸をとり、「由布院」の地名の語源ともなった古代の布「木綿(ゆふ)」を再現した。
 楮を原料とする布は、神を招き、神が宿る布であった。神楽面や信仰仮面などの「九州の民俗仮面」を展示の核とし、庶民の衣や自然布を収集・展示した「木綿資料館」、現代の写真家たちの発表の場「フォト館」、郷土の古陶・小鹿田焼と古民具の収集による「日本の道具館」などを配置した空想の森美術館は、地域文化と連携した美術館として評価されたが、バブル経済沸騰期に、開発に歯止めをかける目的で周辺の山林を購入したことなどの経済事情が重なって、閉館した。銀行による不良債権回収の対象となり、建物と土地を売却されたのだ。
 私と横田とは、三百点の仮面と千点を超える古布・自然布資料とともに、現在地に移転した。かつて「石井記念友愛社」の子どもたちが暮らした家を修復・改装し、仮面と自然布とを展示して、「森の空想ミュージアム」と名づけた日が、私たちの再出発の日となった。弟や、友人たちも駆けつけてくれた。大きな木に抱かれた家で、庭を掃き、落ち葉を焚き、板の間を掃除して織機を置き、織りの仕事を再開した彼女は、生色を取り戻した。銀行との折衝や金の計算に追われた日々が、心身を疲れさせていたのだった。
  森の空想ミュージアムでは、アートや染織のワークショップを行うことから活動を始めた。古家具や古材などを使い、古い家を再生しながらミュージアム機能を構築してゆく作業は「再生芸術(リサイクルアート)工房」であり、周辺の山野から採集してくる自然素材から糸を採り、布を織るのが「自然布ワークショップ」である。少しずつ参加者は増え、定期の受講者も定着しつつある。山や畑の脇などで、邪魔者扱いされている楮や葛や苧麻などから、美しい糸が生まれ、一枚の布が織り上がる時、参加者から、感嘆の声があがる。遠い遠い昔、私たちの祖先が、「けもの」から「人間」へと進化した瞬間から身にまとい続けてきた「衣」の記憶が、瞬時によみがえるのであろう。
 染織工房のすぐ近くに「祈りの丘空想ギャラリー」がある。古い教会を改装し、絵画展などを行う展示空間としたものだ。その横を「赤道」と呼ばれる古道が走っており、小さな泉がある。石器や土器が掘り出されることもあるというその泉は、「うちゅうの泉」と名づけられ、古代と現代のイマジネーションとが交信する場となっている。
 今年、その泉の周辺に、楮の群生地が出現した。もう、私たちは湯布院や九州山地の奥まで、楮の採集に通わずともよくなったのだ。まるで、神様が種を蒔いてくれたような、群落の発生の仕方であった。
 (読売新聞2004年12月24日・くらし欄/「女と男の・・・プロムナード」掲載分)
 
 ■「自然布を織る」展―横田康子と仲間たち―
 アートスペース繭(東京都・京橋)にて2002年10月11日〜10月21日
 ■「九州の仮面と自然布」展 アートスペース繭(東京都・京橋)にて2003年10月7日〜10月20日
  
 上記のとおり、東京・京橋のギャラリー繭において、自然布をテーマとした二つの企画展が連続して開催されました。湯布院から西都市茶臼原・友愛社の森へと移転して
 きた横田康子が継続して行ってきた、自然素材による染織ワークショップの成果です。
 とくに2003年の企画では、仮面と布との組み合わせにより、仮面の表情に艶が出
 て、生き生きとした展示となりました。この企画展は、毎年この時期に開催されるこ
 とも決まりました。以下にアートスペース繭発行のDMに記された紹介の文を転載し
 ます。会期中、ご来場下さったたくさんの皆さん、ありがとうございました。
 楮の繊維から得られた白い布「木綿(ゆふ)」を求めて、横田康子さんが、パートナーの高見乾司さんとともに由布岳の山麓を歩き、原生林へと分け入ったのは、いまから二
 十数年も前のことでした。由布岳に自生する楮から得られた布こそ、「由布院」という
 地名と直結し、神に捧げ、神を招く白い布「木綿(ゆふ)」だったのです。その後、横
 田さんは、高見さんの「由布院空想の森美術館」の仕事を側面から支えながら、「木綿
 (ゆふ)」の復元を中心に、葛布、藤布、チョマによる麻布、九州地方独特の布「ヘラ
 布」など、自然素材から糸をつむぎ、布を織る作業を続けてきました。その間、たくさ
 んの仲間が集まり、それぞれの手法と工夫が加わって、「自然布」と名付けられた素朴
 で味わい深い一群の作品がうまれました。横田さんと高見さんは、湯布院から宮崎県西
 都市へと移動し、現在は「森の空想ミュージアム」を運営しながら、
 すてきな夢をつむぎ続けています。
  
   
 
 
  
 
      森の自然布工房春の作品展
 とき 2008年5月13日―5月22日 AM10:00−PM3:00
 ところ 古民家ギャラリー 陽だまりの家
 宮崎県門川町庵川西 TEL0983−63−5286
 森や山野から、自然の素材をいただき、糸を採り、布に織り上げ、
 ショール、タペストリー、ポンチョなどに仕上げました。「陽だま
 りの家」は古い民家を改装した暖かな空間で、ゆったりとした展示
 となり、たくさんの人に見ていただきました。
 出品作家 横田康子・伊勢紅子・日野業子
 安田裕子・松尾道子・竹本真子
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